YouTube動画の「英語タイトル」は本当に効果的?日本人向けマーケティングで失敗しないための注意点

近年、日本のYouTubeチャンネルで英語のタイトルを見かけることが増えていますね。これは、主に日本人以外の視聴者を取り込み、再生回数を伸ばすことを目的とした戦略だと考えられます。英語話者や英語を理解できる人の数は日本語話者の10倍近くいるため、海外の視聴者をターゲットにすることで再生回数を増やしやすいという背景があるからです。

しかし、この戦略は動画のタイプや運営者の目的によって、その有効性が大きく異なります。特に、マーケティング目的でYouTubeを運用している方にとっては、注意が必要です。

「英語タイトル」が有効な場合とそうでない場合

まず、英語タイトルが有効なコンテンツとそうでないコンテンツを見極めることが重要です。

  • 言語をほとんど必要としない動画には有効

    • 例えば、風景映像、黙々と作業する様子、ペットの動画など、言葉が介在しない、または少ない動画は、言語の壁が低いため、海外の視聴者にも見てもらいやすいです。
    • また、日本語講師のように、そもそも外国人を主要なターゲットとしているビジネスの場合も、英語タイトルは適切であり、問題ありません。
  • 「喋り」が中心の動画やマーケティング目的の動画には不向き

    • 日本語で詳細に話すコンテンツの場合、たとえ英語字幕をつけたとしても、外国人が視聴し続ける可能性は低いとされています。なぜなら、言葉の壁を乗り越えてまで日本の非ネイティブスピーカーのコンテンツを見るメリットが、ネイティブの英語コンテンツが豊富にある中で見出しにくいからです。

再生回数至上主義のYouTuberとマーケティング目的の起業家の違い

この英語タイトル戦略の是非を考える上で最も重要なのが、YouTubeを運営する目的の違いです。

  • YouTuberの目的:再生回数 YouTuberにとって、再生回数はすべてです。ターゲットではない視聴者が見ても、再生回数が伸びれば問題ないという考え方に基づいています。

  • マーケティング目的の起業家の目的:集客と顧客獲得 一方、マーケティングやビジネスの一環としてYouTubeを利用している場合、ただ再生回数を増やすだけでは意味がありません。外国人視聴者が増えても、そこから顧客に繋がり、継続的なビジネス関係を築けるかどうかが重要になります。多くの日本人にとって、英語でコンサルティングを行ったり、継続的なコミュニケーションを取ったりすることは難しく、結果的に「対応できない」ケースが多いでしょう。

日本人視聴者への悪影響と外国人視聴者の獲得難易度

英語タイトルは、日本人視聴者の離脱を招く可能性もあります。

  • 日本人視聴者のストレスとクリック率の低下

    • 慣れない英語タイトルは、日本人視聴者にとって心理的なストレスになることがあります。
    • また、翻訳機を使わないと内容が理解できないような英語タイトルは、「何についての動画か分からない」という理由でクリック率を下げてしまう可能性があります。サムネイルだけで判断され、本来のターゲットである日本人顧客が見てくれなくなるリスクが高まります。
  • 外国人視聴者獲得の難易度

    • 外国人、特に英語ネイティブスピーカーの視点から見ると、英語タイトルがついていても、サムネイルが日本語であったり、動画内で日本語が話されていたりすると、視聴をためらう傾向にあります。
    • 英語ネイティブのYouTubeには、質の高いコンテンツがすでに無数に存在します。わざわざ言葉の壁がある日本のコンテンツを選ぶ強い理由がなければ、彼らは他の動画を選択するでしょう。
    • 仮に視聴しても、言語の理解にストレスを感じれば数秒から数十秒で離脱する可能性が高く、これは動画やチャンネルの評価を下げ、トータルで見るとマイナスに作用することもあります。

SEO効果の限定性

英語タイトルをつけたところで、必ずしも外国人からの検索で上位表示されるわけではありません。YouTube側は、そのコンテンツを日本語のコンテンツとして認識しているため、外国人が英語でキーワード検索をしても、日本のチャンネルが上位に表示されることはほとんどありません。この点から見ても、単に英語タイトルをつけるだけでは、ほとんど意味がないと言えるでしょう。

まとめ:ターゲットを明確にすることの重要性

YouTubeにおける英語タイトルの戦略は、**「誰にコンテンツを届けたいのか」**というターゲット設定を明確に理解した上で実行すべきです。

再生回数を追求するYouTuberと、特定の顧客を集客したいマーケティング担当者や起業家とでは、YouTubeの活用方法における「ベストプラクティス」が異なります。マーケティング目的でYouTubeを運用するならば、安易に流行を真似して英語タイトルにすることで、かえって既存の日本人顧客が離れたり、新規の日本人顧客が見つけにくくなったりする可能性があります。

自社のターゲット層が誰なのかを深く理解し、そのターゲットに響く適切な戦略を選択することが、YouTubeでの成功には不可欠です。